第4回 ケルトの聖なる植物 〜ヤドリギの子孫繁栄術〜 2017-06-05T15:26:25+00:00

Project Description

節分を迎えると,暦の上では季節は春となります。梅の花が香り,水仙の花が香り,そして桜の木の枝には春を待つ蕾がスタンバイしているのをみると気分は春に向かいますが,まだまだ寒い日は続きそうです。まだ新芽の吹いていない木々は葉を落としたままで,森には太陽の光がキラキラと入ります。そして,遠くで鳴く鳥の声も,遮るものがなくひときわ明瞭に聞こえてくるのです。この季節,葉が落ちた茶色い木の枝に、鳥の巣のようにこんもりと影を作るヤドリギが目に留まります。

 

ヤドリギ(ヤドリギ科ヤドリギ属Viscum album)は、宿り木と書く名の通り、他の樹木の枝に寄生する常緑の低木です。日本の冬の風景として印象深いヤドリギは、古代ヨーロッパ社会ケルト民族の僧侶であるドルイドにとって樫の木と共に神聖な植物とされていました。ドルイドは、魔術や呪術、医術などの知識を持ち、自然の様々な現象を感じ取り、現実世界と神秘的な世界の橋渡しをする賢者として崇められ、ハーブを巧みに使う魔女のルーツであるとも言われています。多くのものが死や眠りに向かう厳しい冬の風に吹かれても緑の葉を誇るヤドリギは、沈黙に潜む冬の恐怖を追い払い太陽を元気づけ、大地に生き続ける生命を称える冬至祭の主役でした。生命が降って沸いたような姿から稲妻によって天から降りて来ると信じられ、不滅の生の象徴として多産や幸福の祈りや悪霊除けに使われました。

多産を願う儀式で活躍したヤドリギは、自分自身の子孫をどのように繁栄させているのでしょうか。ヤドリギは宿主となる樹木無しでは生きられませんが、たくさんの子供が同じ木に同居すると宿主の水や養分を親子兄弟で分けねばなりません。新しく子供の家を用意して豊かな生活を願うのが親心というもの、その願いをかなえてくれるのはヤドリギの実を好物とする鳥たちです。種子を包む果肉は粘々していて鳥が啄ばむと嘴や足にへばり付きます。鳥は別の木まで飛んで枝にとまり嘴を擦り付けるため、樹皮の割れ目などから種子が押し込まれます。ヤドリギの実を食べたレンジャクの仲間の糞は粘り気が更に強くなり、食された実は粘々したまま糞に紛れて外に出て、地面に落ちずに枝に付着します。こうしてヤドリギの子孫の新たな生活舞台が設定されるのです。

コリン、アセチルコリンやアルカロイドであるビスコトキシンなどを成分とするヤドリギは、鎮静効果を示し、薬用植物としても活躍してきました。葉や実が、高血圧症や動脈硬化、鎖痛、通経、利尿等に用いられています。そしてアントロポゾフィー(シュタイナー医学)では,このヤドリギが癌の治療に使われてもいるのです。