第2回 花の香りの誘惑  〜花と虫たち〜

第2回 花の香りの誘惑  〜花と虫たち〜 2017-06-05T15:22:32+00:00

Project Description

夏になるにつれて、道端や庭先に咲く色とりどりの花の周りを飛ぶ虫の姿を見る機会が増えてきます。ハチやチョウのような虫たちが花を訪問する一番の目的は、食べ物としての花蜜や花粉を得ることです。そして花たちは食べ物を提供する代わりに虫たちに子孫繁栄の担い手である授粉媒介者(ポリネータ)として花粉を運ぶ役割を演じてもらいます。しかし、ある種のハチにとっての花の訪問はそれだけではすまない揺れ動く思いが絡んでいるようです。

 

精油の中には花の香りを持つものが多くあります。一般に花の香りは虫たちを誘引するために大きな役割を持っていると考えられています。その昔、進化論で有名なダーウィンら博物学者は、森で咲き乱れるランの花の周りで舞うたくさんのハナバチがすべて雄であるという現象に注目していました。

ランの中には、花の形や色、更には香りが雌バチに似ているものがあり、雄バチは意気揚揚と花に舞い降りて腹部を花の表面にこすりつけるような性行為に似たしぐさを示すのだそうです。雄バチはランの花にまんまと騙されて、自分の思いは遂げることなく、授粉の為に使われてしまうのです。1978年にクーレンベルグという生物学者たちは、あるミツバチの雄が前述の性行為に似たしぐさをするお相手であるOphyrys属のランの花の香りに雄バチを興奮させる成分を見つけました。

さて、これとは逆に花の香りをハチが利用するということもあるようです。あるミツバチは交尾の時期になると、雄がたくさん集まって群れを成し、一丸となって視覚的に雌の注目を浴びて誘おうと奮闘します。そのとき雄が同志集合の号令として用いるのはランの花の香りなのだそうです。彼らはランの花の香りを後ろ足に蓄えて、それを漂わせながら仲間の雄たちを集めるのです。ジャスミンやクラリセージなどの精油に含まれるオイゲノール、バニラの精油に含まれるバニリン、ユーカリ、ティートリーやローズマリーなどの精油に含まれる1,8-シネオール、ジャスミンやイランイランの酢酸ベンジルなどはアロマテラピーでもお馴染みの精油成分ですが、これらは雄の同志集合の号令となるランの香り成分として確認されています。

花の香りに包まれると,私たちはとても素敵な気分になります。ローズの香気成分はお肌からの水分の蒸散量を少なくしてくれたり,そして心と共にお肌を活性化してくれたりなど,私たちが花の香りの恵みを受けることもたくさんあります。また,私たちは暮らしの中で、人それぞれ,花をめぐる様々な物語を持っています。それと同様に、ハチなどの虫たちの世界でも花の香りを巡る物語はたくさんあるようです。